パッシブデザインは自然エネルギーを取りいれる技術

パッシブデザインは自然エネルギーを取り入れ、それを活用する設計手法です。
パッシブデザインには主に次のような要素があります。

◎日射取得(冬季)
◎日射遮蔽(夏季)
◎断熱・気密計画
◎自然風の利用

パッシブデザインはこれらの要素を利用して建物の室内環境を快適に省エネルギーで実現することが目的になります。

パッシブデザインを考慮せずに快適な室内環境を実現することはできますが、エアコン等の設備にたよることになります。
パッシブデザインと比較すると毎月の光熱費は割高になります。

パッシブデザインで快適な室内環境と省エネルギー設計を行うには、建物のプランや断熱・気密性能、いわゆる素の建物性能を大切にします。
設備に頼る前に素の建物性能によって快適性と省エネルギーの実現を検討します。

パッシブデザインに必要な要素について

パッシブデザインは太陽と建物の関係が重要なポイントで、太陽からのエネルギーを取り入れやすくするために様々な検討をします。
建物配置は南北軸から振らないように配置し、敷地周辺の影の影響や気象条件を取り入れ、建物形状、開口部を設計していきます。
その後、取り入れたエネルギーを有効に活用する建物の性能を設計検討します。

冬の日射取得は味方にしやすい
冬季は快適な室内環境にするために、太陽からの日射エネルギーを取り入れ機械暖房エネルギーを減少させます。
そのためには敷地の方位に合わせた建物配置とプランが大切になります。

建物を南北軸に合わせ、南面開口部を大きくすることで太陽からの日射エネルギーを取り入れる、すなわち日射取得を増やします。

夏の日射遮蔽は難しい
夏季は建物内に侵入する太陽からの日射エネルギーを遮る、日射遮蔽が必要になります。

冬季に日射を取り入れやすく設計しているので、夏季は太陽高度が違うだけで同じように日射を受けやすくなっています。
ですから、夏季の日射遮蔽の技術は冬季の日射取得より難しいことが多いです。

日射遮蔽の技術は、南面開口部からの日射を遮るために日射遮蔽物を物理的に設置する、東西面の開口部からの日射を遮るために開口面積を極力小さくすることが一般的です。

南面開口部の日射をコントロールする方法の一つに庇があります。
庇によって全てをコントロールすることは難しく、コストに余裕があれば外付けブラインドが最も有効的な手段です。
同様な効果があるスダレを取付ける事も効果があります。

断熱・気密は基本性能
太陽からのエネルギーを取り入れた建物内部の熱が外部に逃げないように、また外部からの熱を建物内部に伝えないようにするためには建物の断熱・気密性能が大切になります。
UA値(外皮平均熱貫流率)やQ値という断熱性能尺度やC値(相当隙間面積)という気密性能尺度で呼ばれていいます。

飲み物が冷めないような水筒と同じで、魔法瓶の性能と似ています。

建物の断熱・気密性能はあくまでもパッシブデザインに一要素にすぎませんので、UA値やC値のみを必要以上に追い求めるだけでは快適で低燃費な建物は実現できません。

自然風利用(通風利用)は限定的
近年、日本の夏は高温多湿が進んでいます。
古い日本家屋では全ての障子を明け放し、通り抜ける風で涼を得ていたようです。

ところが時代が変わり、今の日本の高温多湿な外気を室内に取りこんでしまうと、多湿な空気を快適な湿度にするためにはエアコンが必要になります。
ですから、夏に窓から入る風(自然通風)のみで快適な室内環境にすることは、ほとんど不可能だと思います。

尚、条件が揃えば夏の夜間、冷えた外気を導入して建物内にこもった熱を排出して冷却することができます。

パッシブデザインの精度を高める

建物の断熱性能だけにこだわりUa値だけを追い求め、開口部を小さくしてしまう設計を見かけることがありますが、パッシブデザインされた同じUa値の建物と比較すると日射取得が少なくなってしまうので、暖房エネルギーが増えてしまいます。
UA値競争だけでは片手落ちと言わざるをえません。

パッシブデザインの要となる開口部の設計において、開口部から太陽エネルギーを効率的に取りこんだり、遮ったりする検討は要素が複雑に絡みあっているのでシミュレーションソフトを使わなくては不可能でしょう。

シミュレーションソフト使用して精度を高め、電気・ガスなどの冷暖房エネルギーが最低限になるように検討します。

パッシブデザインがもたらすもの
日本では、「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」・「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現することを目指す」という目標を掲げています。
ですから、電気・ガスなどの冷暖房エネルギーを削減できるパッシブデザインは、目標達成のためにも有効だと考えられます。

地球温暖化の問題は大きすぎて身近ではないかもしれません。

ですが毎月の光熱費は確実に節約できます。
10年、20年と年月を重ねるとその金額は大きくなってきます。

これから家づくりを始めるタイミングならば、パッシブデザインを取り入れてみてはいかがでしょうか?
パッシブデザインはオープンな技術です。
フランチャイズ化された囲いこまれた技術ではありませんから特殊な建材、設備は必要ありません。

パッシブデザインのノウハウを持った建築士は各地にいます。
シミュレーションソフトを使用して検討する技術があれば安心して任せることができるでしょう。
家づくりの検討事項にパッシブデザインも加えて探してみてください。